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ヒト 2026.05.29

りくりゅうペアとともに歩んだ、“食”のサポート-管理栄養士とともに実現した、アスリートのコンディションづくり-

フィギュアスケートペアで世界を舞台に活躍する、木原龍一選手と三浦璃来選手の「りくりゅう」ペア。世界最高峰の大会で念願の金メダルを獲得した、りくりゅうの2人と栄養サポートで支えてきた管理栄養士・公認スポーツ栄養士の西山さん。“宇宙一”の最強タッグが今シーズンを振り返ります。

(中央)三浦璃来選手 2001年生まれ、兵庫県出身。2015-16シーズンにシングルからペアへ転向。
(右)木原龍一選手 1992年生まれ、愛知県出身。2013年、シングルからペアに転向し、ソチ、平昌、北京オリンピックに出場。

2019年に「りくりゅうペア」を結成すると、わずか4年で世界チャンピオンに登り詰め、2022-23シーズンは主要国際大会を全て制し、日本選手初の年間グランドスラムを成し遂げた。2023-24シーズンは腰のケガに苦しんだものの、2024-25シーズンは世界選手権で優勝。2度目の世界チャンピオンに輝く。2026年、スピードと高さ、ぴったりと息の合った表現、観る人を幸せにする笑顔を武器に、日本フィギュアスケート史上最高のペアとして念願の金メダルを獲得。

(左)管理栄養士/公認スポーツ栄養士 西山英子さん
エームサービスに入社後、建設会社の社員食堂に配属。3年間勤務後、本社に異動となり、ビジネスダイニング分野におけるヘルシーメニューの企画や特定保健指導などの健康サポート、栄養士の教育を経験。社会人女子陸上競技部、社会人男子バレーボール部、プロ野球球団、社会人男子ラグビー部などのスポーツ栄養サポート業務や宇宙飛行士の健康管理業務などに携わる。

ベストコンディションで臨んだ最高のシーズンを振り返る

三浦選手:今シーズンが始まる前からエームサービスさんのサポートを受けるようになって、シーズンオフからの体重の落とし方を徹底的に教えていただきました。そのお陰で龍一くんとペアを組んでからベストの体重をキープして臨むことができました。

木原選手:僕はエームサービスさんのサポートを受けて3シーズン目だったのですが、一番ストイックに取り組んだシーズンだったんじゃないかなと思います。2人でオフシーズンから本当に食事に気を付けて、全部やりきった。完璧だったと思います。12月にケガをしたときも、早くリカバリーする食事メニューを教えてもらって、それもすごく役に立ちました。

三浦選手:私たちだけだと栄養の知識がやっぱり足りないので、専門家である西山さんたちのサポートは今シーズンを戦う上で、2人の力の源でした。

2人だからこそ頑張れた、お互いへの想いとは

木原選手: 2人だから頑張れたというのも大きかったと思います。お互いが頑張っている姿を一番近くで見ていたので、「自分も応えたい」という気持ちで、食事にも全力で向き合うことができました。食事はトレーニングそのものではないですけど、勝つためには必要な要素の一つだという意識は、2人とも持っていました。西山さんたちにいろいろ教えていただきながら、楽しく続けられたのも大きかったと思います。

木原選手:実は、僕が栄養サポートを受け始めた頃、りくちゃんはまだ大学生で、食事にはあまり興味がない感じだったんです。教えてもらったことを伝えても、全然聞いてくれなくて(笑)。西山さんたちとの相談はいつもオンラインだったんですけど、りくちゃんにも聞いてもらおうと思って、わざとスピーカーにして話したりしていました。

三浦選手:聞いてないフリをしながらそれを聞いていて。「なるほど」って(笑)。

木原選手:サポートを始めた当初は、ちゃんと続けてくれるのかなって正直心配もあったんです。でもいざ始まってみるとりくちゃん自身の「自分がやらなきゃいけない」という意識がどんどん高くなっていって。本当に一所懸命取り組んでくれました。真剣に向き合ったこの1年の積み重ねが、結果にもつながったと思うので、一緒にやれてよかったですね。

西山さん:私たち栄養士はずっとそばにいられるわけではないので、選手自身で食事の自己管理をできるようになることがひとつの目標でもあります。その意味でもお二人は本当にすばらしかった。実は、こちらが伝えたことをちゃんと吸収して、継続して実践できる選手は意外と多くはありません。お二人は知識を受け取ったら終わりではなく、学んだことをしっかりと続ける力がある。だからこそ世界のトップに立てたのだと感じています。

栄養サポートを受けてからの気づきと変化

三浦選手:栄養サポートを受けるようになって、自分の体のことを全然分かっていなかったんだなと再認識しました。私はもともと体がむくみやすい体質なんですけど、以前は「なぜそうなるのか」も分かっていなかったです。でも「こういう時はこの栄養を摂った方がいい」と的確にアドバイスをいただけるようになって。ミラノに向けて、一番いいコンディションで体を作ることができたと感じています。

三浦選手:実は、ペア結成当初は、体重を落とすために食事を減らそうとして、朝は食パン1枚だけで練習に行くこともあったんです。でも、それだと体が動かないし、集中力も続かなくて。練習中に集中力が切れて、転んでしまうこともあって……。

木原選手: 炭水化物をしっかり摂るようになってから、りくちゃんの集中力は劇的に変わりましたね。体重を落としたい時も、自己流で減らすのではなく、必ず西山さんに相談していました。「今日は練習量が少なかったから、夜の炭水化物を少し減らそう」というように、正しいアドバイスを受けながら、無理なく減量できていたと思います。

木原さん

自己流で炭水化物を減らせば、体重は落ちるかもしれない。でも「これで本当にいいのかな」という不安も残ると思うんです。その点、西山さんに相談すれば、正しい方法で調整できる。「何でも相談できる」という安心感は、すごく大きかったですね。

三浦さん

私はいつも試合の日は、3時間前に食事を摂るようにしているんですけど、緊張もあって、おかずが喉を通らないこともあるんです。以前は無理して食べようとしていたこともありましたが、「おかずは無理して食べなくてもOK。炭水化物を摂るために、ご飯だけはこれくらい食べましょう」とアドバイスをいただいてからは、必ずご飯だけは食べるようになりました。

日々の食事の積み重ねが強さにつながる

木原選手:試合後も、リカバリーのためにすぐエネルギーを補給するよう教えていただいていて、ずっと続けていました。ただ、ミラノのショートプログラムで失敗したときは、正直、食事を口にする元気もなかったんです。でも、「明日のために、勝つために」と切り替えて、無理やり食べに行ったよね。

三浦選手:うん。あの日は試合が終わったのが夜中の12時くらいで、すごく遅かったんです。もう、お風呂に入ってすぐに寝たいという気持ちもあったんですけど。それでも食べないとダメだって2人とも思えるくらい、食事のことを第一に考える習慣が身についていました。

サポートのなかでも印象に残っていることは?

三浦選手:朝はもともと量をたくさん食べられるタイプではなく、ご飯とみそ汁だけで済ませることが多かったのですが、「タンパク質を補給するためにせめてゆで卵だけは食べて」とアドバイスをいただいて。それを習慣にできたことは、自分の中でとても大きな変化だったと思います。朝食をしっかり摂るようになってからは、練習に向けて気持ちの切り替えがしやすくなりましたし、最後まで集中力を切らさず取り組めるようになったと感じています。今シーズンは、日々の食事の積み重ねを続けられたことが、本当に大きかったです。

木原選手:栄養サポートを受ける前と後では、食生活はかなり変わりました。以前は、タンパク質を意識するあまり、鶏むね肉ばかり食べていた時期があって。でも、「一つに偏らずいろんな食材を食べましょう」とアドバイスをいただいてからは肉も野菜も、できるだけ種類を増やしてローテーションするようになりました。最近は、オーブン料理も覚えましたし、この3年間で料理の腕前もかなり上がったと思います。グランプリシリーズの前には、チャレンジシリーズという大会があるのですが、最近はトラベル用の鍋を持って行って、現地で野菜を買って鍋を作るくらいになりました(笑)。

西山さん:それはすばらしいですね!

木原さん

最近はコンビニでも、おにぎりだけで済ますとか絶対嫌で、必ず主菜、副菜に加えて、カルシウムを摂るために飲んでいたアーモンドミルクも買っちゃいますし、ノンシュガーのものを選ぶとか、もう完全に体に染みついていますね(笑)。

西山さん

それはもう完璧ですね。栄養士になれますよ(笑)。

三浦選手:サポートいただく前は、龍一くんの食事を真似して鶏肉ばかり食べていたので飽きてしまって。「もうささみを見たくない!」なんて時期もありました。食事=仕事になっていたんだと思います。でも西山さんからアドバイスをいただいて、食事って楽しいんだという気持ちを思い出すことができました。

西山さん:そういっていただけると、すごくうれしいです。4年に一度の大会に向けて、お二人にとってはすごく大切なシーズンということはよく分かっていたので、私たちも食事が負担にならないように、できるだけ難しい専門用語は使わず、すぐに実践できるような言葉で伝えるよう心掛けてきました。お二人が、目標としていた金メダルという最高の結果を残すことができたことは、私たちにとっても何よりのご褒美です。

栄養サポートを受けてから体の変化

木原選手:3年前に本当に大きなケガをしてから栄養サポートをお願いするようになって、アクシデント的なものはあっても、慢性的なケガは一切出ていません。食事がしっかりできていたからこそトレーニングもしっかりこなせるし、より強くなれたと思います。

三浦選手:食事ってすぐに結果に出るわけではない。でも、数カ月後の体を作っていくために長期的な考えで栄養をコントロールする必要があります。そういう考え方がこれまではなかったんですけど、栄養サポートを受けたことで、食事の大切さ、食事を通しての体作りやその成果を実感できたのは、必ず今後も役立っていくと感じています。

今後は指導者として食事の大切さを伝えていきたい。
これからは自分たちが伝える側へ

三浦選手:日本が“ペア大国”になるにはまだ時間がかかると思っています。でもこれからプロとしてまずはペア競技を知ってもらう活動を続けながら、将来的には指導者の道へ進んでいきたいと思っています。

木原選手:プロとして、今まで以上に日本の皆さんにペア競技を見てもらう活動をしていきたいなと思っています。僕たちを見て「スケートでペアをやってみたい」と思ってくれる子が出てくるのは10年後、15年後かもしれません。でもその未来につながるようにこれからも多くの方に演技を届けていきたいです。

西山さん:日本を“ペア大国”にしたいという目標に向かってこれから後進の指導もされていくと思います。その中で、栄養や食事の大切さは、もう十分お二人の中に身についていると感じています。ぜひジュニア選手や保護者の方に向けて、栄養士と一緒に食事の大切さを伝えていける機会を作っていただきたいですね。

木原選手:はい。最近は後輩たちにも、栄養指導を受けた方がいいと話しています。長く競技を続けるためには栄養についても考えなくてはいけないし、本当に勝ちたいならそこから変えていかないとダメだと思うんです。

西山さん:特にジュニア世代は、これから体ができあがっていく時期なので、一番食事が大切なタイミングなんですよね。

木原選手:僕自身、ジュニアの頃は食事のことなんて全然考えていませんでした。全日本の強化選手だったので栄養講習も受けていたんですけど、当時はただ“受けているだけ”で、自分ごとにはなっていなかったんです。牛乳があまり好きじゃなかったので、「乳酸飲料で代用できますか?」なんて質問をしていたくらいで(笑)。当時は本気で、乳酸飲料が牛乳の代わりになると思っていました。練習量が多かったので太ることはなかったんですけど、今振り返ると、疲労骨折をしていたのはカルシウム不足もあったのかなと思います。

木原選手:もちろん、食事のことをあまり気にしないで好成績を残している選手もいますけど、僕たちは栄養サポートを受けるようになって、成績も上昇していったので。自分たちが将来指導をさせていただく立場になったときには、「健康でケガなく現役生活を続けてほしい」という思いも含めて、食事の大切さをしっかり伝えていきたいです。

栄養サポートを受けて、お二人から感謝のメッセージ

三浦選手:自分の体のことを深く知る、考えるきっかけをいただけたことに心から感謝しています。今シーズンは、教えていただいたことをしっかり継続できたからこそ、金メダルにつながったと思っています。これからも食事を大切にしながら、後輩たちにも“食”の大切さを伝えていきたいです。本当にありがとうございました。

木原選手:3年前に大きなケガをした時からサポートしていただいて、そこから食事に対する考え方をたくさん教えていただきました。その経験は、自分にとって本当に大きなプラスになったと思っています。ケガなく競技を続けられたことが、結果的に競技力の向上にも確実につながっていたと感じています。本当にありがとうございました。これからはプロとしてアイスショーや普及活動を中心にやっていきますので、もう少し筋力をつけて、リフトの安定感を高めていきたいと思っています。またいろいろと教えてください。

西山さん:ここまで言っていただけるようなサポートができたのはすごく光栄です。世界のトップオブトップのお二人をサポートしていて感じたのは、特別なことではなく基本的なことをやり続ける力が大切ということです。支える側の私たちも、ただ理想を伝えるのではなく、どうやったら続けられるかを大事にしていかなくてはいけないと、とても勉強になりました。この経験を組織全体にも還元しながら、より多くのアスリート、そして社会全体の健康支援につなげていきたいと思います。お二人の活躍をこれからも楽しみにしています。

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