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ショク 2025.06.26

地球にやさしいやさい ‐エームサービスが地域と広げる、持続可能な食の選択-

近年、地球温暖化による気候変動の影響により、持続可能な食料供給への関心が高まっています。特に、温室効果ガス(GHG)の排出削減や化学肥料の使用抑制など、環境に配慮した農業の推進は、未来の食卓を守るために欠かせない課題となっています。

1日約140万食を提供するエームサービスグループでは、「10年先、100年先も安全・安心でおいしい食事を安定的に提供したい」という思いのもと、持続可能な食材の調達に取り組んでいます。

「みえるらべる」を表示したポスター例

目次

聞いて、知って、おもいを届けたい
環境に配慮した取り組みを知る ‐生産地を訪問‐

当社は2025年7月より、給食業界で初めて、農林水産省が推進する、生産者の環境負荷低減の取り組みを星の数で「見える化」する事業において、「見える化」ラベル(以下、「みえるらべる」を取得したトマトの提供を、関東圏の受託事業所にて開始します。

提供に先立ち、本件のトマトの生産地である福島県白河地区を訪問し、「みえるらべる」取得に至るまでの取り組み内容と、実際に関わられた生産者および夢みなみ農業協同組合(以下、JA夢みなみ)、全国農業協同組合連合会 福島県本部(以下、JA全農福島)の皆さまの思いを直接伺いました。

「みえるらべる」取得トマトとは?

今回導入するトマトは、JA夢みなみの白河産「夏秋トマト」で、農林水産省が定める環境配慮型の栽培方法の評価に基づき、以下の取り組みを推進することにより、従来の栽培方法と比較して温室効果ガス(GHG)排出量を10%以上削減し、「みえるらべる」星2つを取得しています。

「みえるらべる」取得を訴求

・重油などの化石燃料を使用しない夏秋型ハウス栽培
・土壌診断に基づいた適正施肥と堆肥の活用
・農薬使用の最適化と防除体系の整備
・地域全体での栽培体系の統一

トマトづくり40年 生産にかけるおもい:生産者様

夏秋型ハウス栽培のトマトは、連作を避け、6月から始まるトマトの後にはキュウリ、その後は小松菜と作物を切り替え、年間3回転の栽培を行うことで、土壌の健全化に努めています。また、長年の栽培で栄養が蓄積されていることもあり、美味しいトマトが育ちます。

「昔よりも早い時期から真夏の暑さになるからね。それが一番体力的に大変。」温暖化の影響で、夏の高温が作業にもトマトの品質にも影響を与えています。ハウス内を白いカーテンで遮光し、温度を下げる工夫も。暑すぎるとトマトが落果しやすくなり、朝晩の収穫作業が必要になります。長年の経験と、規定に沿った栽培方法で「みえるらべる」の取得は比較的スムーズに進んだとのことですが、その裏には日々の積み重ねがあっての成果です。

夏秋トマトのハウス(外観)
夏秋トマトのハウス(内観)
生育中のトマト
お話を伺った水野谷 政男様

「トマトは5ミリくらいにスライスして、刻んだ玉ねぎをのせて食べる。いろいろ試したけど、素材が美味しいからそれが一番」と話す水野谷様。愛情をこめて作ったトマトを社員食堂などで「美味しく、安く提供してほしい」との願いも口にされていました。

夏秋トマトのハウスにて、水野谷様とJA夢みなみ、JA全農福島のご担当者様、当社訪問者 

JA夢みなみトマト選果場について

福島県西白河郡中島村にある選果場には、近隣の7市町村の生産者の方々から納品され、経験豊富な選果員12名がレーンから流れてくるトマトを目利きし、選別していきます。その後、センサーにより等級や階級にわけられ、箱詰めされます。搬出からの流通時間も考慮し、消費者に届いた時に食べ頃になるよう工夫をしています。

地域の課題と取り組み: JA夢みなみ・JA全農福島 ご担当者様

JA夢みなみが位置する福島県南部のトマトの栽培については、高齢化などにより減少傾向にあり、夏場の高温や日照不足、湿度の高さなど気候変動の影響も出ています。2016年に3つのJAが合併して発足したJA夢みなみでは、各地域の特色を生かしつつ、環境に配慮した農業を推進。夏秋トマトでは重油を使わず、土壌診断に基づく施肥や堆肥の活用、農薬の適正使用を進め、共同選果場として「みえるらべる」星2つを取得しました。

また、品目ごとの施肥設計や防除体系を示した「手引書」を配布し、講習会や種苗メーカー・県との連携を通じて栽培体系を統一。品質の安定化と生産者との信頼関係構築に努め、地域全体で意識の統一を図っています。

JA夢みなみ 営農部 園芸課 しらかわ園芸 課長 仁平 行洋様
そさいの栽培手引き(生産・防除指針書)

お客様(消費者)の皆さまに伝えたいおもい

JA夢みなみ 営農部 園芸課 しらかわ園芸 主任 緑川 一樹様

販売担当なので、どうしても価格などの現実的な部分に意識が向いてしまいますが、最終的には、生産者の方が苦労して作ったトマトを消費者の皆さまに美味しく召し上がっていただきたいです。

JA夢みなみ 営農部 園芸課 しらかわ園芸 鈴木 雄樹様(指導担当)

生産者の方は暑い時期も一生懸命作業を続けています。美味しさについては、夢みなみのトマトが一番だと思っています

緑川様・鈴木様
見た目に多少の違いがあるトマトも品質にはほとんど差がありません。味や中身の良さにも目を向けていただけると、生産者の努力がより報われて、地域にとっても大きな支えになります。こうした農産物の価値をさらに高めるために6次化(加工・販売)にも取り組んでいます。
JA夢みなみネットショップはこちら

JA全農福島 営農販売企画部 営農支援課 小針 和真様

トマトをはじめとする様々な作物の現場に足を運ぶ中で、生産者の皆さんのご苦労を日々実感しています。価格の高騰が続く中でも、その裏に努力と工夫があることを知っていただいたうえで、「美味しい」と感じていただけたら嬉しいです。私自身、こちらの出身ということもあり、福島の農産物を見かけると自然と手が伸びますし、とても魅力のあるものだと感じています。

「みえるらべる」とエームサービスへの期待

JA夢みなみでは、東北地域の中でも比較的早い段階で「みえるらべる」の取得に取り組んでいますので、今後の広がりや消費者の反応を見ていきたいと思います。エームサービスの現場で調理や提供をされる方々の工夫によってトマトの魅力と価値を最大限に引き出し、提供していただけると大変嬉しいです。

環境配慮という価値をどう伝えるか:エームサービス担当者

購買・運営管理本部 IDSセンター MD企画室 室長 上倉 由寛

マーケティング担当
「話をお伺いして、初めてわかることが多い」と改めて感じました。普段スーパーで買う食材は当たり前にそこにあり、料理されるとさらに背景が見えにくくなります。だからこそ、「高い・安い」ではなく、「なぜその価値があるのか」をどう伝えるかが大切です。今回の取り組みがその一歩となり、多くの人に届くように発信していきたいと思います。

購買・運営管理本部 環境マネジメント室 室長 行場 忠宏

環境マネジメント担当
環境への取り組みが、消費者の心を動かす「きっかけ」になります。今回の「みえるらべる」取得トマトのような事例から、取り組まれている皆さまの「かっこ良さ」が伝われば、とても意義があります。時間はかかるかもしれませんが、環境という視点から関心を持ってもらうことが、私たちの役割だと感じています。

購買担当者のおもい 

地域の皆さんと連携しながら、今後も取り組みを進めていきます。       後列(右)ユア キッチン サービス株式会社 近藤 達哉 / 後列(左)上原 正則

ユア キッチン サービス株式会社 
購買担当 近藤 達哉


生産者の皆さんが気候の温暖化で苦労されている様子を拝見し、何かできないかと考えていたところ、農林水産省の環境負荷低減の「見える化」事業を知り、GAP認証などの取得に積極的なJA全農福島のご担当者に相談したことが、取り組みの始まりです。

JA夢みなみ様とは2023年より関東向けの夏から秋にかけてのトマトを供給いただいており、「環境負荷低減の算定をしてみませんか」とご提案したところ、昨年10月にJA 夢みなみトマト選果場として「みえるらべる」星2つを取得、11月にはトライアルとして販売も実施されました。2025年も「みえるらべる」星2つを継続し、エームサービスの関東エリアの事業所での本格的な提供を開始します。この取り組みは、給食業界では初の事例として、農林水産省関東農政局からも注目されており、取り組みについて情報共有を予定しています。

「食」から未来を支える企業として、その出発点となるように確りと取り組んでいきたいと考えています。お客様に、おいしさと共に、関係者の皆さまの思いと、その価値を届けてまいります。

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