C&C事業部で輝く栄養士プロジェクトに密着!
さまざまな場所やシーンで「食」を提供しているエームサービスですが、刑務所や拘置所などの刑事施設にも事業所があることをご存じでしょうか? 今回は、こうした事業をまとめるCommissary & Correctional Services事業部(以下C&C事業部)で実施している「栄養士プロジェクト」の取り組みを紹介。実際に現場で奔走する栄養士のみなさんにもお話を伺いました!
C&C事業部ではどんな事業を行っているの?
2007年、官民が協力して事業・運営を行うPFI方式による第一号の刑事施設にて収容関連サービス業務(被収容者への給食提供、衣類等の調達・洗濯業務、物品販売、職員食堂運営業務等)を開始。現在は、物品販売を中心に全国約70施設で業務を受託している。うち8施設においては、栄養士が国で定められた厳格な「矯正施設被収容者食料給与規程」等をもとに献立を作成、エーム従業員が調理・盛付業務等を担い、被収容者への食事提供を行っている。また、被収容者の更生・社会復帰を目的に、エームの調理師が被収容者に対して調理指導を行い、被収容者自身が職業訓練として調理・盛付・洗浄業務を行っている施設もある。
C&C事業部の栄養士プロジェクトとは?
新たなビジネスの創出や栄養士の価値向上、部内外でのコミュニケーション活性化、エンゲージメント向上などを目的として立ち上げられた栄養士による事業部内プロジェクト。17名の栄養士で構成され、「栄養セミナー」「ワークショップ」「ヘルシー・ナビ」の3つを軸に活動。全国各拠点にいるメンバーはオンラインで連携を取っている。
栄養管理のチカラを社会に還元する。エームのC&C事業に迫る。
お話を伺ったのは…
C&C事業部長・森山さん
1999年に入社し、都内にてBDS(ビジネスダイニングサービス)事業を経験。2002年に長野県、2010年に栃木県に異動し、複数の事業所を管理する役職を歴任。C&C事業部が創設された2011年にエリア責任者として経験した後、保養所・研修施設などを所管するCRS事業部、企画業務部などを経て、2024年C&C事業部長に。
お話を伺ったのは…
C&C事業部 栄養士プロジェクトサポート・原さん
2005年入社。2020年までHSS(ヘルスケアサービス)事業所に在籍し、病院や老人ホーム、保育園、院内保育園など、老若男女に対する食事に携わる。産育休を取得して2021年に関連事業本部長室に復帰し、2024年にC&C事業部に異動。豊富な経験を生かし、縁の下の力持ちとして栄養士たちの業務をフォローしている。
社会復帰への一助も担う「収容関連サービス」
――収容関連サービス参入の経緯を教えてください
2007年当時 は刑事施設の被収容者数の増加により、施設を増やさなければならなかったという時代背景がありました。刑務所を新設するにあたり、管轄である法務省が「PFI方式で民間のノウハウを活用しよう」という動きがあり、委託される業務範囲の中に「食」に関する業務が入っていたことが入札に参画する大きなきっかけとなりました。
――刑事施設における事業を展開する意義とは?
社会インフラとしてなくてはならない施設の運営を、その基礎となる安全・安心な「食」を通じて支えていることが大きな意義として挙げられます。刑事施設は過去に過ちを犯した方々の更生を行う施設であり、出所後の社会復帰支援のためのさまざまな職業訓練も行われています。給食の職業訓練もその中の一つですが、このような取り組み が被収容者の更生、社会復帰といった国の大きな課題の一助になっていると思います。また、刑務所と周辺地域との共生、という視点においても「食」や「健康」を通じて寄与できることがあると考えています。
――C&C事業での栄養士の重要性についてはどう考えていますか?
栄養士という立場としては、食を通じて被収容者の健康管理をすることが責務です。献立は、全国統一の「矯正施設被収容者食料給与規程」等に則って作成するのですが、アレルギーや、病気療養中の方などが入所していれば献立のつくり分け、確認も行っています。まずは健康管理につながるこの2点が、大きな役割だと考えています。また、限られた条件のなかで彩りや味にこだわり、満足度の高い食事を提供していくか、という点も大切に考えています。
――C&C事業の今後の展開について聞かせてください
今後の事業成長のためにも民間委託の効果を最大化していきたいと考えています。そのために、安心安全な食事提供の継続を前提とした、より効率的な運営提案を積極的に行っています。さらには、従業員の専門スキルを生かし、刑事施設に勤務されている方々や地域住民向けの新たなサービスを創造していくことで、地域との共生や従業員のモチベーションアップにもつなげていきたいです。
エームの真価を発揮する! 全国をつなぐ「栄養士プロジェクト」
お話を伺ったのは…
「栄養セミナー」プロジェクトリーダー・嶋さん
2001年入社。HSS事業の病院や老健、保育園などを経験。その後、2012年にC&C事業部に配属。西日本の刑事施設を経て2024年7月からは、完全民間で調理・盛り付けなどを行う給食形態の刑務所に配属。
プロジェクトの「栄養セミナー」では、被収容者にとって一番の楽しみである「食」について、栄養を踏まえて解説。被収容者に対しての栄養セミナー実施はエームサービス初の取り組みとなる。
お話を伺ったのは…
「ワークショップ」プロジェクトリーダー・西村さん
2006年入社。HSS近畿事業部に配属後、2010年に地元にある社会復帰促進センターへ。その後2度の産育休を取り職場復帰。社会復帰促進センターは全国初のPFI方式による官民協働の刑務所で、給食業務、職員食堂、購買業務のほか洗濯・清掃業務も受託。職業訓練講師という立場で被収容者の前で講義も行っている。
プロジェクトの「ワークショップ」は、矯正展(地域住民向けの刑務所のお祭りのような催し)での開催がメイン。有償のワークショップにしたことでC&C事業部として初めて一般のお客様から対価をいただくイベントに。
お話を伺ったのは…
「ヘルシー・ナビ」プロジェクトリーダー・山本さん
2016年、新しく受託する刑務所の立ち上げ時に入社。7年間勤めた後、2023年に他の刑務所に異動。そこでは被収容者が調理を行うため、その指導、教育まで請け負っているのが特徴。食材を発注・手配して被収容者に届けるだけでなく、一緒に厨房に立って指導やアドバイス、サポートなども行う。
プロジェクトの「ヘルシー・ナビ」は矯正展で一般の方や刑務官に対して実施。機器を使用し簡単な測定をして、栄養士がその結果をもとにアドバイスする。
――プロジェクトの取り組み内容はどうやって決めたのでしょう?
私が担当した受刑者向けの「栄養セミナー」は、出所時アンケートの疑問や質問に答えることを目的に実施しました。「なぜ麦飯なの?」といった食事に関する質問を多くいただくので、「矯正施設被収容者食料給与規程等という刑務所内の規則に沿って食事を出しているから」といったイメージで、疑問や質問に対する回答を伝える場になっています。
昨年、他事業部で実施した一般のお客さまに向けて味噌メーカーさんと共同で行った味噌づくりのワークショップで刺激を受けまして。「刑務所でもできないかな」とスタートしたのが「ワークショップ」です。今年5月に矯正展での出店を行ったのですが、多くの来客がある矯正展を舞台にするのであれば、その場で手軽に作れて、すぐにできあがるものでないと難しいと思い、混ぜるだけでできあがる「ハーブソルトとカレースパイスづくり」に決めました。
「ヘルシー・ナビ」は、施設職員の方との雑談からヒントを得ました。「刑事施設は夜勤があり生活も不規則だから、僕たちの健康管理もしてほしいくらいだよ」という会話から、エームサービスのヘルシー・ナビについてお伝えすると「ぜひどこかで実施してほしい」と要望をいただいて。上司に、そのやりとりを話したところ、矯正展で実現することができました。
基本的にどのプロジェクトも事業部内の栄養士が協力して進めていますよね。実際、私が担当した栄養セミナーの後半では、西村さんが栄養・健康系の講義をしてくれました。
嶋さんと私の事業所は離れていたけれど、オンライン会議でこまめに顔を見て話せたのは良かったですよね。「ワークショップ」もそうでしたが、多くの来客がある矯正展ではあまり時間をかけられないので「ヘルシー・ナビ」も大変だったのでは?
時間をかけないように、数分で測定結果が出てアドバイスができる「血管年齢ナビ」と「ベジタブルチェック」の2つを実施しました。ベジタブルチェックはお子さんも測定ができるので、「どのくらい野菜を食べているのかな~」と興味を持ってもらえましたし、血管年齢ナビも多くの来客があり盛況でした。
栄養セミナーは被収容者に向けて行うので、直接反応を伺うのは難しいのですが、セミナーで話をした大豆ミートに関して「体にいいならもっと献立に反映してほしい」という要望があったと後から聞いて、興味を持ってくれて良かったと安心しました。
――プロジェクトで印象に残っていることはありますか?
セミナーの実施場所は下見ができない初めての場所で、当日になってモニターに資料が映らないというトラブルに見舞われてしまって焦りました……。でもプロジェクト事務局の原さんのサポートもあって無事に実施できました。
栄養セミナーで特に意識したことはありますか?
とても緊張しましたが、伝えたいことを丁寧にわかりやすく伝えようという思いを強く持って資料作成や当日の講話に臨みました。
ワークショップでは完成したスパイスの瓶にラベルを貼ってもらう予定だったのですが、お客さまの思い出になるように、写真付きのラベルシールをその場で作成することにしたんです。屋外の会場で撮った写真を、屋内の事務所プリンターで印刷して持ってくるまでの導線を整えるまでが大変でしたね。何度もシミュレーションをした甲斐あって、「せっかくだから」と照れながら写真を撮られるご夫婦など嬉しそうなお客さまの顔が見られた ことは、本当に良かったです。
ワークショップで売り上げを出すのはC&Cでは初めてなので、値段設定も難しかったのではないですか?
難しかったです。相場を調べて、少し利益が出る程度を想定しました。矯正展はお祭りのような催しで、ワンコインで支払いができるように、500円に設定しました。
私は異動してすぐにプロジェクトの仕事に着手したので、通常業務との両立に苦労しました。しかも初めての異動で、新しい仕事を覚えることでいっぱいいっぱいだったので、皆さんのフォローがなければ乗り越えられなかったかもしれません。
このプロジェクトがスタートしてから栄養士同士のやりとりが増えましたよね。普段は各拠点にいるので、今までは年に1度くらいしか会って話す機会がなかったですし。そう考えるとコミュニケーションも高まっていると感じます。
今までは自分の事業所の中だけで仕事をしている感覚でしたが、このプロジェクトを始めてからは栄養士同士が手を取り合って進めている感覚が強くなり、他の事業所の存在が近く感じるようになりました。
――栄養士の活躍の場が増えているという実感はありますか?
長年勤めてきて、栄養士が食を提供できる場所は一つではないと実感しています。刑事施設はエームの事業の中でも特殊な環境だと思いますが、使命感を持って働けています。エームは多様な場所に食を届けているため、栄養士として幅広い経験ができる会社ですね。
本当にいろいろな施設の給食に携わっているので、栄養士としてできることがたくさんありますよね。私はC&C事業部しか経験していないので、今後もずっと刑事施設で献立を立てていくのかと思っていましたが、今回、このプロジェクトに参加して、栄養士もあらゆることにチャレンジできると実感しました。
私は20年近くエームに勤めていますが、栄養士が「使われている」というイメージがなく、自発的にいろいろなことに挑戦できる会社だと思います。今、自分が何をやりたいかを伝えることも重要だと感じています。自分を見つめ直すことは大切だと思いますし、エームはその希望に応えてくれる会社だと思っています。
栄養士としてやりがいを感じることも多いですよね。私は被収容者の方のアンケートで「出所したらつくりたいと思っているメニューがあります」という言葉をもらった時はとてもうれしかったです。
ありきたりですが、自分が立てたメニューを「おいしい」と言われるのはうれしいですよね。日々新しいメニューも考えるのですが、予算や材料の調達の都合もあって味には試行錯誤することも多いものです。検食の時に刑務官の方に「おいしくなりましたね」と言っていただけると、努力も報われます。
決められた栄養価や予算で、バランスのとれた美味しい献立をつくることができた時にはやりがいを感じますよね。一方で私が一番うれしいのは、教育に携わった後輩が成長して、他所の事業所の方から「あの子頑張っているよ」という知らせを受けた時ですね。
――今後の目標、挑戦してみたいこと
8月に味噌づくりのワークショップを開催して好評だったので、他の事業所でも実施したいと考えています。今後は新しいワークショップを考えなければならないので、実績がある他業態の事業部でのワークショップも参考にしながら、刑事施設関連の方々が笑顔になるようなワークショップを打ち出していきたいと思います。
栄養セミナーは今年度も実施予定です。こういった企画はなかなか開催の機会がないので、ワークショップやヘルシー・ナビの実施時に合わせて、栄養の話を組み込んでいきたいと思っています。
私はいつでも出動できる体制を整えて、ぜひ他の矯正展でも実施したいと考えています。ヘルシー・ナビの実施には多くのスタッフが必要になるので、これを機に、社員食堂などで行われる際に人手不足になった時は、C&Cからも即戦力としてヘルプで動けるように力をつけておきたいです。