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ショク 2025.10.31

“おいしいの記憶”をたどって お腹も心も満たされる 私のソウルフード

子どもの頃、台所から漂ってきたおいしい香り。学校帰りに食べた地元のグルメや昔から親しまれてきた郷土料理など、地域や家族、時間と結ばれたソウルフードには“あのとき”を思い出させてくれる魅力があります。人の数だけ違うソウルフードがある——。大切に守り続けていきたい“おいしい記憶”を教えてもらいます。

あなたの“ソウルフード”を教えてください(秋田県秋田市)

秋田県秋田市出身 佐賀さん(企画業務部 業務管理室チーフ)

【おいしい記憶1】
「冬に恋しくなる、秋田せりたっぷりの“だまこ鍋”!」

秋田といえば「きりたんぽ鍋」が有名ですが、私の家では「だまこ鍋」が定番でした。きりたんぽは、炊いたご飯をつぶして竹棒に巻いて焼いたものに対し、だまこはつぶしたご飯をまん丸に丸めたもの。どちらも鶏だしベースで野菜をたっぷり入れていただきます。わが家のだまこ鍋に欠かせないのが秋田の「せり」で、これがないと成立しないと言っても過言ではありません。香り高く、太くてしゃきしゃきとした食感で秋田では根っこまで食べるんですよ。冬になると恋しくなる味わいです。

【おいしい記憶2】
「“しょっつる”は、アレンジ自在の万能調味料!」

もう一つの郷土鍋が「しょっつる鍋」です。秋田では11~12月頃、お腹に卵を含んだハタハタ(“ブリコ”とも呼ばれます)を使いますが、この鍋に欠かせない調味料が、魚を発酵させて作る“しょっつる(魚醤)”です。実は私の実家が明治40年から続く「高橋しょっつる屋」で、幼い頃は大量に届く何トンもの魚に塩をまぶす作業が私のお手伝いでした。
家のおでんはしょっつるで味付けするのが定番です。他にも鶏肉をしょっつると酒に漬けて焼いたり、炊き込みご飯やアヒージョにしたり。ナンプラーの代わりにも使えるのでアレンジは自在です。最近では、ラーメン店やベトナム料理店からも注文があり、調味料としての可能性が広がっているんですよ。

【おいしい記憶3】
「ちょっと変わったネーミングも愛おしい! 懐かしグルメ」

“バナナボート”って知っていますか? ふわふわの生地でバナナとクリームを包んだご当地パンで幼い頃から慣れ親しんできた味わいです。東京では出合えないので実家に帰ると即買いします。他にも、秋田のB級グルメといえば「チャイナタウン」の「みそちゃんぽん」です。テレビでも何度も紹介されている有名店で、みそ味のあんが丼いっぱいに注がれていて最後までアツアツ。それもまたいいんです。“夏の風物詩”といえば“生グソ”も忘れてはなりません。正式名称は「生グレープフルーツソフト」といって、かき氷の上にソフトクリームがのったスイーツ。インパクトのあるネーミングですが、グレープフルーツの果肉がたっぷりでおいしいです。学校の近くにあったので、高校時代に通った思い出の味です。

佐賀さん

私にとってのソウルフードは“ふと食べたくなる味”です。東京ではなかなか手に入らない食材も多いですが、だからこそ“田舎の味の価値”を実感しています。秋田はのどかで、お米もお酒も、そしておいしいお供もたくさんあります。ぜひ訪れた際は堪能してみてください。

あなたの“ソウルフード”を教えてください(青森県青森市)

青森県青森市出身 我妻さん(DX推進部 部長)

【おいしい記憶1】
「おでんは“しょうがみそだれ”にたっぷりつけて食べます」

大学進学で上京し、初めて食べた東京のおでん。まず、しょうゆべースのだしで煮ていることに衝撃を受けました。というのも、青森ではみそとしょうが、みりん、酒などで溶いた“たれ”で食べるスタイルで、具は水で煮ただけ。おでんの具材は、白いこんにゃくと地元名産の根曲がり竹、ペラペラなさつま揚げ(「大角天」といいます)とちくわ、つぶ貝、たまごが定番です。しょうがたっぷりのたれが、体の芯まで温めてくれる思い出の味ですね。今でも作りますが、家族にも好評ですよ。他にも驚いたのが赤飯です。青森の赤飯は砂糖を入れて作るので甘いのですが、上京して食べた赤飯は甘くはなく、“なんて貧相な味わいの赤飯なんだろう”と思った記憶があります。

【おいしい記憶2】
「1週間食べ続ける! 懐かしの“けの汁WeeK”」

青森には「けの汁」という郷土料理があります。冬に野菜が育ちにくかった土地柄、野菜を食べるための知恵で、とにかく具材を細かくさいの目に刻んでみそ汁に入れます。各家庭によって具材は異なりますが、基本は大根、にんじん、ごぼう、凍み豆腐、大豆、昆布の他に、保存食材でもある“水煮”のわらびやふき、たけのこ、きのこを使います。大量に作って1週間食べ続けますが、3日目位に飽きます。そんな時は新たな具材を追加してまた食べ続けます。この“けの汁WeeK”で青森県民の性格は辛抱強くなる気がしています(笑)。

【おいしい記憶3】
「1年を通して、魅力的な食材がたくさんあります!」

三方を海に囲まれ真ん中に八甲田山がそびえる青森は食材の宝庫。季節の移り変わりとともに、“旬の食材”が明確なので、自然と思い出ともリンクします。妻との結婚のあいさつで帰省した3月は“トゲ栗ガニ”が抜群においしい時期でした。当時、最初はとても緊張していた妻でしたが、初めて食べるトゲ栗ガニの味わいに驚き、感動したようで、緊張もほぐれたそう。今でもあの時の“トゲ栗ガニはおいしかったね”と言ってくれます。地元では、春の訪れを教えてくれるカニで、小ぶりながら、柔らかな身で甘みがあり、濃厚なみそがおいしいんですよ。他にも、GWのお花見の時期はシャコ、そのあとは山菜や根曲り竹、お盆が過ぎ9月下旬までの1カ月しか出回らないのが“嶽(だけ)きみ”といって青森名産のとうもろこしです。そして、毛まめ、サンマと続きます。1年中“おいしい食べ物カレンダー”に彩られた人生は、豊かだなぁと感じます。

我妻さん

子どもが生まれてから、故郷の味を食べさせたいなと思うようになりました。子どもに“おいしい”と言ってもらえると、自分のルーツとのつながりが感じられてほっこりします。やはり現地へ赴き、その土地の風土を感じながら食べる方がおいしく感じます。ぜひ本州最北端へお出掛けください。

あなたの“ソウルフード”を教えてください(岩手県滝沢市)

岩手県滝沢市出身 佐野さん(営業開発本部 複合営業開発室 セールスチーフ)

【おいしい記憶1】
「学生時代を思い出す懐かしい味といえば“福田パン”」

私にとってソウルフードといえば、“福田パン”です。店舗では50種類以上の具材からその場でサンドしてもらうスタイルで、組み合わせは自由自在。コンビニや高校の売店などにも売っていて、いつでも食べられていたので、県外に出た時にどこにも売っていなくてびっくりしました。お気に入りは“コーヒー味”です。学生の頃、売店で買って友達と食べたり、親が遅い日の軽食にしたり、人気の味はすぐ売り切れるので、走って買いに行ったりしたこともあります。今でもたまに食べたくなって、帰省した時に買ったり、送ってもらったりしています。ソウルフードは“いつも日常にあった味”。癒やしでもあり、地元とのつながりを感じる存在です。

【おいしい記憶2】
「地元で定番の汁ものといえば“いもの子汁とひっつみ”です」

家庭の味と聞いて思い出すのは、イカの内臓をみそで炒めた“イカのふいり”です。イカを丸々一杯買ってきて、身と内臓を分け、内臓だけを炒めたものをご飯にのせて食べるんです。見た目は茶色くて地味なんですが、すごくおいしくて、お酒にも合うんですよ。あと、給食でも家でもよく出ていたのが“いもの子汁”。岩手の郷土料理の一つで、里いもの入った豚汁に近いみそ汁です。“ひっつみ”もよく食べていました。小麦粉を練ってちぎり、しょうゆベースのだしに野菜や鶏肉を加えて煮たもので、アツアツ、もちもちの味わいです。

【おいしい記憶3】
「定番だったお祭りグルメも懐かしい味わいに!」

お祭りの時の定番といえば “うす焼き”と“一休だんご”です。うす焼きはクレープのような生地にねぎや紅しょうが、桜えびや天かす、のりなどをのせて焼き、最後にソースやしょうゆを塗ってくるくる巻いて食べるんです。一休だんごは揚げたもちに甘じょっぱいたれを絡めた“カリもち”な味わいです。岩手は「盛岡冷麺」も有名で、私のおすすめは焼肉屋「髭」です。いつも家族と訪れた時に必ず注文する冷麺は、麺が白くてもちもちっとしていてスープも他と全然違うんです。やっぱり地元の味が恋しくなりますね。日本酒なら“AKABU”が有名です。あと、岩手では“夜市”が定期的に開催されるのですが、そこでも飲める岩手のクラフトビール“ベアレンビール”もおすすめです。とってもおいしいですよ!

佐野さん

岩手は盛岡冷麺の他に、わんこそばじゃじゃ麺といった独自の麺文化が根付いてきた地域。自然も豊かで温泉も多いので旅先としておすすめです。夏は花火大会やお祭りで盛り上がり、冬はスキーや雪景色を眺めながらの露天風呂が最高です(おいしい焼肉と日本酒もセットで!)。季節ごとにお楽しみが満載ですよ。


私たちは、食を通じて人と人をつなぎ、心を満たす時間を大切にしています。地域に根ざした“おいしい記憶”を未来へつなぐことも、私たちの使命のひとつ。これからも、食の力で人々の暮らしに寄り添い、豊かな社会づくりに貢献していきます。

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