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コト 2022.12.14

プラントベースフード使用メニューを手塚治虫キャラクターとコラボレーションし提供、社員食堂からSDGsに取り組む

鉄腕アトムの人形に囲まれた画像

エームサービスは、2022年6月より手塚治虫先生のマンガやキャラクターとコラボレーションした「プラントベースフード)使用メニュー」を、全国の社員食堂などで提供しています。
期間限定のキャンペーンや一部の事業所への提供ではなく、定期的に全国の事業所へメニューを配信。幅広い世代に人気の手塚キャラクターと、提供する事業所数の多さが重なり、このカテゴリーとしては食材メーカーや卸売の方も驚く大ヒットメニューとなりました。
今回、メニュー開発やコラボレーションの経緯などを、手塚プロダクションでキャラクターグッズのライセンス事業を手掛ける深沢さま、および弊社の企画担当、メニュー開発担当にお聞きました。

※プラントベースフード:植物由来、または、その大部分が植物由来原材料から作られた食品。畜産物や水産物に似せて作られていることが特徴

プロフィール

会話する3名
(左)手塚プロダクション 深沢さま (中央)エームサービス 西野 (右)エームサービス 星野

深沢友里子さま
株式会社手塚プロダクション
著作権事業局 営業1部 ライセンスビジネス担当 ディレクター

西野美央
エームサービス株式会社
IDSセンター MD企画室(本コラボ企画担当者)

星野亜気
エームサービス株式会社
運営管理センター 運営企画室(メニュー開発担当者)

※記載の情報は取材当時のものです。また、座談会はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスや換気に十分配慮しました。撮影も可能な限り短時間で行いました。

コロナ禍の前から提供していたプラントベースメニューを、もう少し手軽に試してもらいたかった

プラントベースフード開発の背景は?

エームサービス西野
エームサービス 西野

西野
エームサービスでは、環境負荷の軽減や健康への寄与、近未来に予測される食糧問題などを背景に、これまでも大豆ミートなど植物由来の食材を使ったメニューを開発、コロナ禍になる前から、受託運営事業所向けにヴィーガンメニューとして提供していました。
ただ、環境によい食事を食生活に取り入れることは、海外では当たり前でも、日本ではあまり浸透していなくて、自分ごととして捉える人が少ない状態でした。「環境」と「食」が結びつかないし、お説教くさいですからね(笑)。

深沢
確かに、ヴィーガンフードは少しハードルが高いですね。
強い信念や思いがあるか、もしくは健康に配慮して選ぶ方がいると思うのですが、日本は環境としてあまり整ってないから、続けていくのも難しいと思ってしまいます。社員食堂で食べるお昼をヴィーガンメニューにしても、朝夕も提供しているお店は多くないし。

西野
そうですね。なかなか浸透しづらいというのは、今でもあるんです。ただ、コロナ禍が一段落してくると、SDGsという言葉で価値観を説明できるようになり、プラントベースフードにも関心が寄せられるようになりました。

星野
そういう社会の変化を捉えつつ、また、最近では非常にクリエイティブで美味しいメニューも登場しているので、誰もが手軽に食べられるヴィーガンフードを提供しようと考えました。ネーミングも、少し硬いニュアンスの「ヴィーガン」ではなく、「プラントベースフード」にして。

手塚キャラクターに、SDGsをテーマにしたメニューはうってつけ

コラボレーションするきっかけは?

手塚プロダクション 深沢さま
手塚プロダクション 深沢さま

西野
手塚プロダクションさんとの出会いは、展示会にキャラクターのライセンサーとしてSDGsのPRをなさっていたときでしたね。

深沢
そうですね。展示会は広くライセンスの機会を探す場で、SDGsというテーマに限らず、いろいろな募集をしていました。その中で、エームサービスさんから「こういう取り組みがあるんですが」とお話がありました。

星野
プラントベースフードは少しとっつきづらいイメージがあるので、いつも通りのバナーやPOPでメニューを訴求すると、十分にアピールできないって思っていました。だから、アニメとかキャラクターの力を借りられないかなと。
手塚プロダクションさんは、キャラクターライセンスの件もさることながら、SDGsにも積極的に取り組んでいるというお話でした。

深沢
手塚治虫先生は、「地球は壊れやすいからみんなで大事にしていこう」といった考えがすごく強くある方で。それを私たちは受け継いで、SDGsについてもできることからやっているところ。だから、お話をいただいて、まさに私たちのキャラクターに打ってつけと思いました。

西野
そもそもキャラクターを使って、メニューを提供するのは弊社では初めて。不安もありましたが、ご一緒できると決まったときはすごくワクワクしました。手塚先生の「ガラスの地球を救え」というご著書をさっそく買ったぐらいです(笑)。人間の欲望で自然が消えていく危機感などが書かれてあって、個人的にもすごく興味深かったです。

手塚先生の考えとのつながり、再現性、見た目にこだわって、メニューを開発

開発の経緯は?

エームサービス 星野
エームサービス 星野

西野
2021年の年末ぐらいからご相談し始めて、春にはお話がまとまっていきましたよね。サービス提供は6月と決まっていたので、急いで準備を進めた覚えがあります。
苦労したのは、給食メニューとして、どうやってキャラクターを使っていくか。

深沢
見せ方のところですよね。

西野
ええ。「『これはなんで鉄腕アトムなの?』みたいなことを、お客さまに言われないように」、そう深沢さんから言われたことを覚えています。
ただ、手塚先生がもともとお持ちだった環境などに対する考えと、プラントベースフードの考え方は同じだと思ったので、そこを表現していこうと思いました。先ほどお話した手塚先生のご著書からキーワードを拾って、つながりを見つけたり。

深沢
アイデアや企画は、すべてエームサービスのみなさんから出していただきました。ネーミングは結びつけ方が上手で感心しましたね。ちゃんとストーリー、背景を理解して作られているのがすごく伝わってきました。だから、こちらもOKを出しやすかったですよ。

星野
メニュー開発担当としては、たくさん販売できることを考えました。キャラクター契約を結んだ手塚プロダクションさんにもメリットがないといけないので。
まず、さまざまな事業所がある中で、どこでも同じように作れる「再現性」に配慮しました。工程もシンプルに、調理でのブレが生じないメニューを目指しました。
また、「プラントベースフードは健康にいいけど美味しくないだろう」といった先入観を持っている方もまだまだ多いので、手塚作品のストーリー要素とコラボさせることで、食べたくなるような見た目にもこだわりました。
「ぱっと見てわかりやすいメニュー」か、「何これ?今までないけど食べてみようかな」と、ちょっと目を引く感じか、どちらかの仕上がりにしました。

ジャングル大帝コラボ ライヤのトマトチーズ風ラーメン
©Tezuka Productions
ジャングル大帝コラボ
ライヤのトマトチーズ風ラーメン
鉄腕アトムコラボ アトムのベジハンバーガー
©Tezuka Productions
鉄腕アトムコラボ
アトムのベジハンバーガー
リボンの騎士コラボサファイアの選べるライス ベジキーマカレー
©Tezuka Productions
リボンの騎士コラボ
サファイアの選べるライス
ベジキーマカレー

表面的ではなく、きちんと勉強して開発しているのが、試食会場からも伝わってきた

試食会の様子は?

試食会の様子

深沢
試食会でいただいたのは、「お茶の水博士のソイハムカツバーガー(大豆ミートを使ったハムカツのハンバーガー)」でしたね。
正直言うと、私個人としてはこれまであまりプラントベースの代替肉に関心がなかったんです。「大豆は美味しいから普通に煮たり、豆腐で食べたりすればいいかな」って。
そういう気持ちで試食会に行って、食べたらすごく美味しくって!全然大豆ってわからない。初めてプラントベースフードを食べましたが、こんな美味しくて体にいいなら、取り入れようと思いました。

星野
ありがとうございます。メニューの開発担当としては、進んで食べることがなかった方に「美味しい」って言っていただくのが一番うれしいんです。

深沢
あと、試食会場にバナーがあって、プラントベースに取り組む理由などが説明されていました。わかりやすくて、それもすごく感心したことのひとつです。
最初のネーミングから、見た目、ポスターやPOP、プロモーションの内容、最後に実際のメニューと、ゴールを定めて、そこに向かって作り込んでいると思いました。表面的ではなく、勉強して取り組んでいることが、試食会に行ってすごくわかりました。

販売数は25倍に増加。クライアント、カスタマー、食材メーカー、卸売にも好評

メニューを出したときの反響を教えてください。

工程表を一緒に見るキッチンスタッフ
当社テストキッチンでの試作の様子

西野
予定通り、6月に鉄腕アトムやジャングル大帝をモチーフにしたメニューが発表されました。
お寄せいただくクライアントさんの声は、「面白いことするね」などポジティブなものが多かったですね。メニューを召し上がるお客さまはディスプレイを見て、写真を撮ったりと、まさにキャラクターとのコラボで狙った通りの反応でした。
当初の目標は月間3,000食。それまでプラントベースフード使用メニューは、月間1,000食ぐらいしか提供できていなかったので強気な目標設定です。正直不安だったんですが、お陰さまで月間約2万5,000食を食べていただけるメニューに成長しました。

星野
プラントベースフードの食材メーカーさん、卸売の方も、びっくりされてました。
リピートされないとメーカーさんも作れなくなってしまうので、安定的にずっと提供できるスキームが食材を使う側にも提供する側にも必要です。
キャンペーンなど一過性のものや、一部の事業所向けにプラントベースフードを提供することはあっても、年間を通してあらゆる業態のお客さま向けにずっと提供し続けてるのは、この業界でもあまりないと思います。そういう意味でも、ひとつの成功例になったかなって。

深沢
SDGsは、うちの会社のポリシーのひとつなのでこれからも全社で取り組んでいきますが、ライセンスのビジネスでやることはとても難しい。そんな中で、私たちとしても、この取り組みは成功例になったと思います。

イベントメニューを出すのが難しかった業界にも、プラントベースフードを広めていきたい

今後の展望を教えてください

星野
社員食堂を利用する方は、社会貢献だけを考えて自分の昼食を選ばないんですよね。メニューを開発する立場としてはやっぱり食べる方のことを考えて作りたいですし、社会貢献中心になってしまったら、それはもうフードサービスの仕事じゃない気もします。
とはいえ、企画としてはSDGsといった切り口も大切ですから、両立をさせられるようなやり方は、今後もずっと模索し続けたいと思います。

西野
今後の計画を少しだけお話しすると、深沢さんに一番最初にお勧めされたブラック・ジャックとのコラボメニューがようやく発表されます!

深沢
ブラック・ジャックって、みんな作品は好きなんですけど、ちょっとダークなイメージがあって商品になりづらいんですよね。

西野
医療業界の中でアイコンとして地位を確立しているブラック・ジャックを使って、ぜひ成功させたいと思います。弊社としても期待は大きいんです。医療関係のお客さまはたくさんいますが、これまでイベントメニューをご提供するのがなかなか難しかったので。
今後は医療関係の事業所に限らず、これまでイベントメニューを出すのが難しかったお客さまにも、プラントベースフードを広めていければいいなと思います。手塚プロダクションさんとキャラクターの力をお借りしながら。

深沢
他にも作品はいっぱいあるので、「エームサービスさんと言ったら手塚キャラ」と刷り込まれるまで使い続けていただければ(笑)。

西野・星野
ありがとうございます!(笑)

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